
米連邦予算が名指し批判―LAホームレス支援機関の「ずさんな会計」が招いた4億ドル資金削減の全貌
トランプ大統領は2026年4月、ロサンゼルスのホームレス支援機関「LAHSA(ロサンゼルス・ホームレス・サービス局)」を「ひどい記録を持つ機関」と激しく非難し、約4億ドル(約600億円)の連邦資金削減計画を発表しました。何十億ドルもの税金が適切に追跡されていなかったことが独立監査で明らかになっており、政権は抜本的な改革を求めています。

トランプ政権は2026年4月3日(現地時間)、2027会計年度の連邦予算案を発表しました。その予算書の中で、ロサンゼルス・ホームレス・サービス局(LAHSA)を名指しし、「米国で最も多い路上ホームレスの数を削減するという点で、ひどい記録を持つ機関である」と厳しく批判しました。 加えて、2025年3月に実施された独立監査では、同機関が連邦・地方の数十億ドルの資金を正確に追跡することに失敗していたことが判明しており、これが今回の大幅削減の直接的な引き金となりました。
大統領の予算案は、住宅都市開発省(HUD)が管轄する「コンティニュアム・オブ・ケア(CoC)」プログラムへの連邦補助金を全廃することを提案しており、LAHSAはこのプログラムを通じて年間約4億ドルの連邦資金を受け取ってきました。 トランプ政権は、この削減によって浮いた財源を、法執行強化・精神保健サービス・露営禁止の徹底執行を優先とする新たなプログラムへ振り向ける方針を示しています。

LAHSAは今回の批判が出る以前から、深刻な会計管理の問題を抱えていました。2026年3月末時点で、LAHSAは連邦政府が義務付ける年次財務監査(シングル・オーディット)の提出期限を守れなかったことが明らかになっています。 同機関の暫定CEOであるジタ・オニール氏は、「この1年間でリーダーシップの交代が相次ぎ、財務チームの対応が追い付かなかった」と弁明しましたが、外部の主任監査人は1月・2月・3月と複数回にわたって期限延長を余儀なくされていたと証言しています。
さらに、2026年2月にはロサンゼルス郡がLAHSAの財務・運営状況の全面的な見直しに着手することを決定しました。 同郡の調査報告書によれば、杜撰な会計手続きによって業者への前払い資金の未回収が多数発生しており、支払い可能な資金があるにもかかわらず、別の業者への支払いが遅延するという事例も確認されています。 また同月、連邦検察はLAのホームレス対策に充てられた公的資金2,300万ドルを不正取得したとして男1人を逮捕しており、機関の管理体制の甘さが浮き彫りになっています。

ロサンゼルスのホームレス問題は、全米最大規模の危機として長年注目されてきました。LAカウンティが2026年1月に公表した報告書によれば、2026〜27年度に向けて2億1,900万ドルの予算削減が見込まれており、路上アウトリーチ活動が半減し、「パスウェイ・ホーム」施設が20か所から7か所に減少、提供ベッド数も2,200床以上から460床へと激減するリスクがあります。 連邦資金の削減が重なれば、状況はさらに悪化するおそれがあります。

地元当局によれば、今回の連邦予算案が成立した場合、LAカウンティだけで補助付き永住住宅に暮らす1万4,500世帯以上がホームレス状態に陥る可能性があるとされています。 一方でトランプ政権は、既存の「ハウジングファースト(住宅優先)」政策を否定し、永住住宅への補助金上限を30%に抑える新ルールを導入済みであり、これまで連邦資金の80%以上を永住住宅に充てていたLAカウンティにとっては、大きな方針転換を迫られる局面となっています。

トランプ政権は、今回の資金削減だけでなく、2025年7月には露営地を撤去してホームレスをケア施設へ移送するよう地方自治体に求める大統領令にも署名しており、ホームレス対策における連邦政府の姿勢を根本から転換させようとしています。 その背景には、民主党政権下の自治体が巨額の予算を投入しながらもホームレス数の削減に失敗し続けているという、トランプ政権の強い問題意識があります。
今回の予算案はHUDへの大規模な歳出削減も含んでおり、公営住宅・セクション8(住宅バウチャー)・高齢者向け住宅・障害者向け住宅などのプログラムを一括して州へのブロック補助金化するとともに、全体で266億ドル以上を削減する内容となっています。 トランプ大統領は、法執行・精神保健・薬物依存治療を柱とした実効性の高い対策に資金を集中させることで、何十年にもわたって解決できなかった路上ホームレス問題に終止符を打つことを目指しています。

今回の予算案公表後、LAHSAのオニール暫定CEO は「この資金を削減したり、コンティニュアム・オブ・ケア・プログラムを不安定化させたりすることは、路上のテントを減らすのではなく、増やす結果を直接もたらすことになる」とする声明を発表し、強く反発しています。 カリフォルニア州の地方指導者たちとホワイトハウスは、住宅戦略をめぐって繰り返し対立を深めており、連邦政府との関係はより一層の緊張状態に入っています。
なお、今回の予算案には、ホームレス関連以外にも物議を醸す削減項目が含まれています。加州の高速鉄道プロジェクトに対する未執行の40億ドル補助金を全額取り消すとし、ホワイトハウスは「無駄遣いの典型」と批判しました。 また、フェア・ハウジング・アドボケーツ・オブ・ノーザン・カリフォルニアへの補助金も削除する方針であり、予算書はその理由を「白人優位の権力構造の解体に積極的に取り組んでいる」団体への資金提供は適切ではないと説明しています。

トランプ政権は2026年4月、年間約4億ドルの連邦資金を受け取りながらも会計管理の杜撰さや成果の乏しさを指摘され続けてきたLAHSAへの資金を全面的に削減する方針を予算案で明示しました。 独立監査での不正追跡の発覚、提出期限の未達、さらには公金横領事件の摘発と、問題は多岐にわたっています。 トランプ政権は「税金を効果的に使う」という原則のもと、法執行と精神保健を柱とした新たなアプローチへの転換を断行しており、長年にわたって民主党系自治体が推進してきた「ハウジングファースト」路線を根本から否定する姿勢を鮮明にしています。 今後は議会での予算審議を経て正式に決定される見通しですが、カリフォルニア州との対立はさらに激しくなることが予想されます。






