渋滞地獄の405フリーウェイが18分に!ロサンゼルス史上最大・250億ドル地下鉄トンネル計画の全貌

片道90分が18分へ激変—LAメトロが承認した地下高速鉄道が米国の通勤を塗り替える

米カリフォルニア州ロサンゼルスを南北に貫く405フリーウェイは、ピーク時には90分以上の渋滞が日常的に発生する「悪夢の道路」として知られています。2026年1月、LAメトロ(ロサンゼルス郡都市交通局)はこの渋滞を根本から解消する史上最大規模の地下高速鉄道計画を全会一致で承認しました。


1. 405フリーウェイとは何か—アメリカ最悪の渋滞区間の実態

405フリーウェイ(インターステート405号線)は、ロサンゼルス郡を南北に走る全長約72マイル(約116キロ)の高速道路であり、その中でもセプルベダ峠(サンタモニカ山脈)を越える区間は、全米でも指折りの慢性的渋滞地点として悪名高い場所です。

この区間の1日あたりの通行台数は約40万台に上ります。朝夕のラッシュアワーには、サンフェルナンド・バレーとロサンゼルスのウェストサイドを結ぶこのルートの所要時間が40分から90分以上に膨れ上がることも珍しくありません 。渋滞は周辺道路にも波及し、地域住民の生活全体に深刻な影響を及ぼし続けています。

カリフォルニア州運輸局(Caltrans)は2014年に同区間に追加車線を設けましたが、根本的な解決にはほど遠く、渋滞は悪化の一途をたどっています。ロサンゼルスの都市交通機関は数十年にわたってこの問題への抜本的対策を模索してきましたが、いよいよその解決策が動き出しました。


2. LAメトロが承認した「セプルベダ交通回廊計画」の全貌

LAメトロ・セプルベダ鉄道地図

2026年1月22日、LAメトロ(ロサンゼルス郡都市交通局)の理事会は、「セプルベダ交通回廊(Sepulveda Transit Corridor)」プロジェクトのローカル優先代替案(LPA)を全会一致で承認しました。これはサンフェルナンド・バレーとウェストサイドを地下高速鉄道で結ぶという、ロサンゼルス史上最大規模のインフラ整備計画です。

承認された計画は「完全地下方式の重軌道鉄道(Heavy Rail Transit)」であり、ヴァン・ナイズのメトロリンク駅から南はメトロEライン(エクスポ/セプルベダ駅)までを結びます。理事会でLAメトロ理事のケイティ・ヤロスラフスキー氏は「過去に何度もフリーウェイの拡幅を試みたが失敗した。このプロジェクトは根本的に異なる戦略だ」と述べ、喝采を浴びました。

LAメトロの上席計画担当役員セシリー・ウェイ氏も「セプルベダ交通回廊プロジェクトは、サンフェルナンド・バレーとウェストサイドを結ぶ重要な地域接続路線を加え、渋滞した405フリーウェイへの速く、安全で信頼性の高い代替手段を提供する」と説明しています。8,000件以上の市民意見が集まる中、プロジェクト全体への反対意見は70件未満にとどまりました。


3. 路線・駅・深度—プロジェクトの具体的な数字

承認されたルートは全長約13〜14マイル(約21〜23キロ)で、計7つの駅が設置される予定です 。驚くべきはその深さで、サンタモニカ山脈の地下最低500フィート(約150メートル)以深を貫くトンネルが掘削されます 。これにより地表への建設工事がほぼなくなり、地上住民への振動や騒音の影響も最小限に抑えられます 。

所要時間についても劇的な改善が見込まれています。現状では405フリーウェイを利用した場合、渋滞時に40〜90分かかる区間が、この高速鉄道によって18分以内に短縮される見通しです 。ピーク時の運行間隔はわずか2.5分に1本という高頻度運転が計画されており、1日最大12万4,000人の利用を想定しています 。また、乗客が車で移動する距離を1日あたり約80万マイル(約128万キロ)削減する効果も試算されています 。

駅の位置は、メトロDライン・Eライン・バレー線との乗り換え拠点に加え、ヴァン・ナイズのメトロリンク駅、さらに長年にわたって地域住民が強く求めてきたUCLAキャンパス内停車駅も含まれます 。UCLAへの停車は学生・教職員・研究者など多数が利用することから、計画の「非交渉条件」として議論の中心にあり続けてきました。


4. 総工費250億ドルの財源と官民連携(P3)

プロジェクトの総工費は200〜250億ドル(約3兆〜3兆7,500億円)と見積もられており、これはロサンゼルスの交通インフラ史上最大規模の投資となります 。現時点では、2016年に有権者の承認を得た消費税を財源とするメジャーM・メジャーRから、すでに約35億ドル(約5,250億円)の確保が確認されています。

プロジェクトの設計・建設には民間企業との官民連携(Public-Private Partnership=P3)方式が採用されています。LAメトロは2つの民間コンソーシアムを選定し、それぞれに設計案の策定を依頼しました。一方はBYD(中国系電気自動車メーカー)が主導する「LAスカイレール・エクスプレス」で地上モノレール案を提案し、もう一方はベクテル社が主導する「セプルベダ交通回廊パートナーズ」が完全地下方式の自動運転重軌道鉄道を提案しました 。理事会は後者の完全地下重軌道案を採択しています。

完成目標は2033年が一つの目安とされています 。しかしメトロの複数の担当者は「より短い初期運行区間、より直線的な線形、より少ない駅数によってコストを削減できる可能性がある」とも述べており、段階的開業の可能性も視野に入れています。


5. 2028年ロサンゼルス五輪との関係

ロサンゼルス・オリンピック複合施設

ロサンゼルスは2028年の夏季オリンピック・パラリンピックの開催地となっており、大会期間中には世界中から数百万人の観客・選手・関係者が集まることが予想されています。セプルベダ交通回廊は、この五輪開催に向けた都市インフラ整備の柱の一つとして位置づけられています。

ただし、現実的に見れば全線開業を2028年に間に合わせることは困難です。全体的な工事期間、環境影響評価(EIR)の完了、資金調達の確定などを含めると、フル開業は早くとも2033年前後とみられています 。一方で、LAメトロをはじめ地域の政治指導者たちは、五輪開催をこのプロジェクト推進の強力な政治的追い風として最大限に活用しようとしています。

トランプ現政権も、インフラ投資と雇用創出を重視する政策方針のもとで、大規模公共交通プロジェクトへの連邦支援の枠組みが整備されており、このロサンゼルスの計画もその恩恵を受け得る立場にあります。五輪という国際的なショーケースを前に、米国の都市インフラへの投資を世界に示す絶好の機会とも言えます。


6. 過去の失敗—ボーリング・カンパニーの挫折

実は、405フリーウェイの地下にトンネルを掘るという構想は、今回が初めてではありません。イーロン・マスク氏が2016年に設立した「ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)」は、2017年にロサンゼルス市内の地下トンネル建設許可を申請し、LAX(ロサンゼルス国際空港)から405フリーウェイに沿ってサンフェルナンド・バレーまでを結ぶ高速地下トンネル構想を発表しました。

当時イーロン・マスク氏は「最初の路線は405フリーウェイとほぼ並行して、LAXから101号線まで走る。電動スケートが車両と人をのせてメインのトンネル内を最高時速150マイル(約240キロ)で走行する」と語っていました。しかし2018年、地域住民団体2グループが「適切な環境影響評価なしで計画が進められている」として訴訟を起こし、ボーリング・カンパニーは和解の末にセプルベダ地区でのトンネル計画を断念することとなりました。

この挫折を経て、マスク氏の会社はドジャースタジアム周辺のトンネル計画へと方向を転換しました。一方でボーリング・カンパニーはラスベガスのコンベンションセンターにおいて「LVCCループ」と呼ばれる地下交通システムを完成させ、2021年に開業。2024年時点でリゾート・ワールドなど複数の延伸区間も開業済みです。ロサンゼルスでの失敗はあったものの、地下交通技術そのものの可能性を示した点では大きな意義がありました。


まとめ

セプルベダ交通回廊プロジェクトは、全米で最も混雑した高速道路区間の一つである405フリーウェイ・セプルベダ峠区間を、18分以内で結ぶ地下高速鉄道によって劇的に改善しようとする、ロサンゼルス史上最大のインフラ計画です。

2026年1月のLAメトロ理事会による全会一致の承認を受け、プロジェクトは初期設計・環境審査フェーズへと正式に移行しました。総工費200〜250億ドル、全長13〜14マイル、地下最低500フィートを掘り進む7駅構成の完全地下重軌道鉄道という壮大な計画は、過去の無数の挫折を乗り越えた都市の意志の結晶です。

2028年ロサンゼルス五輪という強力な期限が政治的推進力を提供し、官民連携(P3)と既存の税収財源が資金面を支えます。片道90分超の「渋滞地獄」が18分の快適な地下鉄乗車に変わる日が、確実に近づいています。

"あな知ら"をフォローしよう
  • X Network52.1K
  • Youtube14.9K
カテゴリー

広告

次の投稿を読み込んでいます
FOLLOW US
検索 話題
特に読まれている記事
読み込み中

ログイン中 3

登録中 3

カート
カートを更新しています

ショップカートは空です。ショップページに戻り再度スタートしてください