
トランプ大統領「NATOは一方通行だ」―イラン問題で露わになった欧州との亀裂
トランプ大統領は2026年3月17日、NATOを「一方通行の取り決め」と批判し、「離脱に議会の承認は必要ない」と明言しました。イラン問題での欧州各国の消極的姿勢が引き金となり、長年くすぶってきた米欧間の防衛費負担問題が、再び表面化しています。


2026年3月17日、ドナルド・トランプ大統領はホワイトハウスの執務室で記者団に対し、NATO(北大西洋条約機構)への強い不満を表明しました。トランプ大統領は「同盟国が我々を助けてくれないのであれば、それは当然考え直すべき問題です。その決断に議会は必要ありません」と述べ、米国が単独でNATOへの関与を変更できるとの立場を明確にしました。
同日、トランプ大統領はTruth Socialにも投稿し、「私は常にNATOを一方通行の取り決めと見なしてきました。我々は毎年数千億ドルを費やしてこれらの国々を守っています。しかし、我々が助けを必要とするときに、彼らは何もしてくれないのです」と訴えました。現時点では「離脱を具体的に検討しているわけではない」とも付け加えておりますが、明らかな警告としての意味合いを持つ発言です。

トランプ大統領が強調する防衛費負担の不均衡は、長年にわたるNATOの根本的な課題です。NATOはGDP(国内総生産)の2%を防衛費に充てることを加盟国に求めていますが、多くの欧州諸国がこの目標を達成できていない状況が続いています。米国は加盟国の中でも突出した防衛費を負担しており、その格差がトランプ大統領の強い不満の背景にあります。

今回の発言の直接的な引き金となったのは、米国主導のイランへの軍事的対応をめぐる欧州各国の消極的な姿勢でした。特にホルムズ海峡における作戦について、複数のNATO加盟国が支援を拒否したことが、トランプ大統領の怒りに火をつけた形となっています。また、トランプ大統領は「ウクライナ支援で欧州を助けているのに、こちらが必要なときには何もしてくれない」とも述べており、ウクライナ問題をめぐる貢献の非対称性も不満の一因となっています。

欧州各国の中でも特に注目を集めているのが、ドイツの態度です。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、米国主導のイラン関連作戦への関与を明確に拒否し、「これは我々の戦争ではありません。我々が始めたものでもありません」と述べました。この発言はトランプ大統領の怒りに対して、欧州が真っ向から反論した象徴的な場面となっています。
欧州がイラン問題への関与に消極的な背景には、エネルギー安全保障や自国経済への影響を懸念する声があります。ホルムズ海峡の緊張による原油価格の高騰は欧州経済にも直撃しており、各国は自国の利益を最優先に考えざるを得ない状況です。

一方、NATO事務総長のマルク・ルッテ氏は最近、トランプ大統領の圧力がNATO加盟国の防衛費増額を促し、同盟を強化する効果があったと認めています。ルッテ事務総長は、トランプ大統領のような圧力がなければ同盟が揺らいでいた可能性すら示唆しており、強硬姿勢が成果を生んでいることは否定できません。
トランプ大統領の周辺からも、欧州の政治的・人口動態的な変化により、一部の同盟国の信頼性に疑問符がつくとの懸念が示されています。「一方通行」という批判は、単なる感情論ではなく、米国が長年抱えてきた安全保障の不満を凝縮した言葉であると言えます。
トランプ大統領の今回の発言は、単なる感情的な批判ではなく、NATOの構造的な問題、防衛費の不均衡、危機時の対応格差、そして米国の一方的な負担を改めて世界に突きつけるものでした。「議会は必要ない」という言葉は、米国の対外政策における大統領権限の強さを示すとともに、欧州への強力な警告として機能しています。
イラン問題をめぐる米欧の亀裂は、NATO同盟の未来を問う試金石となりつつあります。トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」の原則に基づけば、自国の利益に応えない同盟関係を見直すことは、一貫した政策判断であると言えます。欧州各国には、防衛費の目標達成のみならず、同盟国として行動でその価値を証明することが、これまで以上に求められています。






