
カリフォルニアから21万6千人が脱出―住宅費・山火事・増税が招いた”黄金州の終わり”
米国勢調査局が2026年3月26日に公表した最新データにより、ロサンゼルス郡が2024年7月から2025年7月の1年間で全米最大の人口減少を記録したことが明らかになりました。約5万4,000人が同郡を去り、「脱カリフォルニア」の深刻さが改めて浮き彫りになっています。

米国勢調査局が2026年3月26日に発表した最新の人口推計データは、アメリカ全土に衝撃を与えました。ロサンゼルス郡は2024年7月から2025年7月の1年間で、約5万4,000人の住民を失い、全米の郡・地域の中で最大の人口減少を記録したのです。

これにより、ロサンゼルス郡の総人口はおよそ970万人を割り込む水準まで落ち込みました。2020年時点では1,000万人超を誇っていた全米最大の郡が、わずか5年余りで300万人規模の減少に向かいつつあるという現実は、「かつてアメリカの夢の象徴」とも呼ばれた都市の変容を如実に物語っています。
GP紙のマイク・ラチャンス記者は「これほど悪い数字だとは誰も想像していなかった。新しく公開されたデータを見れば、状況は誰もが認識していたよりはるかに深刻だということが分かる」と指摘しています。
ロサンゼルス郡の人口減少は、今に始まったことではありません。同郡の人口は2015年にピークを迎えた後、緩やかな下降が続いてきました。2019年から2023年の間だけでも、郡全体で37万5,800人もの住民が失われており、これはピーク時からの総減少数の4分の3に相当します。

カリフォルニア州全体でも、州外への転出超過(国内純流出)は6年連続で続いており、2025年だけで国内転出超過は約21万6,000人に達しました。2023〜2024年の転出超過が約14万人だったことと比較すると、その規模は急拡大しています。U-Haul(引越しトラックレンタル大手)のランキングでも、カリフォルニア州は6年連続で「流出最多州」のワーストに位置づけられています。
2020年から2025年にかけてカリフォルニア州が失った人口は累計17万人超と、同期間における全米で最大の5年間減少を記録しています。

2025年1月にロサンゼルスを襲った大規模山火事は、既に進行していた人口流出を一気に加速させました。パリセーズ火災とイートン火災を含む一連の山火事は、1万6,252棟もの建物を焼失させ、18万人以上が避難を余儀なくされました。経済的損失は最大570億ドル(約8兆円)に上るとも推計されており、これはカリフォルニア史上最も壊滅的な災害の一つとなりました。

公式の死者数は31人とされていましたが、ボストン大学公衆衛生大学院とヘルシンキ大学が共同で発表した研究では、山火事に関連した超過死亡数は約440人に達するとの推計が示されました。煙による大気汚染、医療・精神的ケアの混乱などが間接的な死亡要因になったと研究者たちは分析しています。
カリフォルニア州財務省のデータも、ロサンゼルス郡の人口減少について「山火事の影響」と「国際移民の大幅な減少」の2点を主因として挙げています。
山火事や移民政策の変化だけが原因ではありません。カリフォルニアの「住宅費の高さ」こそが、長年にわたって住民を追い出してきた最大の構造的問題です。カリフォルニア州の物件のうち、実に30.4%が100万ドル(約1億5,000万円)超の価格帯となっており、その多くは決して豪華とは言えない物件です。

2020年から2025年9月にかけて、中価格帯の住宅の月々の支払いは74%、低価格帯に至っては78%も急騰しました。一方で、同期間の平均時給の伸びはわずか25%にとどまっています。賃貸でも家賃は42%上昇しており、賃金の伸びをはるかに上回るペースで生活コストが膨らんでいます。
カリフォルニアの中央値住宅価格は2025年に90万9,400ドル(約1億4,000万円)に達し、全米平均のおよそ2倍の水準にあります。Realtor.com のシニアエコノミスト、ジョエル・バーナー氏は「カリフォルニアの住宅問題の核心は単純で、何十年にもわたって、住みたいと思う人の数に見合った住宅が供給されてこなかったことだ」と指摘しています。調査では、カリフォルニア州民の約34%が住宅費を理由に他州への移住を検討したと回答しています。

ロサンゼルスを去った住民たちは、どこに向かっているのでしょうか。同じ国勢調査データによれば、隣接するリバーサイド郡とサンバーナーディーノ郡の2郡は、同期間に合計で2万1,000人超の住民を新たに迎え入れました。ラスベガス都市圏も同期間に2万人以上の流入を記録しています。

ラスベガスは3年以上にわたって全米で7番目に速いペースで成長する都市圏となっており、2025年のメトロ人口はおよそ295万人に達しています。税制の優遇や、カリフォルニアと比較して格段に手の届きやすい住宅価格が、移住者を引きつけています。
さらに規模の大きな流れとして、カリフォルニアからテキサスへの転居が際立っています。2024年から2025年にかけて、カリフォルニアからテキサスに移住した人数は約7万7,000人に上り、全米の州間移動の中で最大の人口移転となりました。2009年から2025年の累計では、カリフォルニアからテキサスへの移住者はおよそ100万人に達すると推計されています。
トランプ政権の移民政策も、カリフォルニアの人口動態に大きな影響を与えています。米国勢調査局のデータによると、2024年7月から2025年7月の間に、全米への国際移民数は前年比でほぼ半減し、270万人から130万人へと急落しました。この劇的な減少が、全国の人口増加率を0.5%まで押し下げた主因となっています。

カリフォルニア州に限ると、国際純移民数は2023〜2024年の36万1,000人から、2024〜2025年にはわずか10万9,000人へと激減しました。カリフォルニア州財務省の報告書も「2025年には、ほぼすべての人道的移民プログラムが終了したため、国際純移民は前年比でおよそ半減した」と明記しています。
この結果、カリフォルニアは2025年に実質的な人口減少を記録した5州(カリフォルニア・ハワイ・ニューメキシコ・バーモント・ウェストバージニア)の一つとなりました。移民による人口補完がなければ、国内流出超過だけでカリフォルニアが受けるダメージはさらに深刻だったと言えます。なお、トランプ政権による移民規制の強化は、国境の安全保障を優先する政策の一環であり、違法入国の抑止という観点からは一定の成果を上げているとも評価されています。

今回の衝撃的な人口データが指し示すものは、単なる統計上の数字にとどまりません。ソーシャルメディアでは「ニューサム・エフェクト(ニューサム効果)」という言葉が拡散しており、同州の人口流出がニューサム知事の長期政権の”負の遺産”であるという見方が広まっています。
カリフォルニア州は、ニューサム知事の下で初めて人口が継続的に減少し始めました。住宅危機の深刻化、企業・富裕層の相次ぐ転出、山火事への対応批判、ホームレス問題の慢性化—これらが積み重なり、「かつてのアメリカの夢の地」という地位は大きく揺らいでいます。

ニューサム知事は2028年の民主党大統領候補の最有力者と目されていますが、GP紙のラチャンス記者が指摘するように、「なぜ人々は彼の州から逃げ出すのか。本来なら正反対であるべきではないか」という問いに、知事はいずれ真正面から向き合わなければならないでしょう。全米最大の人口流出という数字は、2028年の大統領選を見据えるニューサム知事にとって、無視することのできない重大な政治的リスクとなっています。
今回、米国勢調査局が公表した2025年の最新人口データは、ロサンゼルス・カリフォルニアが直面する危機の深刻さを改めて数字で証明しました。ロサンゼルス郡は1年間で5万4,000人を失い、全米最大の人口減少地域という不名誉な記録を打ち立てました。2020年比では郡全体で既に30万人以上が失われており、「1,000万人都市」の看板はもはや過去のものとなっています。

その背景には、①天文学的な住宅価格と生活コストの高騰、②2025年1月の大規模山火事による壊滅的打撃、③トランプ政権の移民政策による国際移民の急減、④高税率・過剰規制による企業・富裕層の転出、という複合的な要因が絡み合っています。
脱出した住民たちを迎えたのは、低税率・手頃な住宅・良好なビジネス環境を誇るテキサス、ラスベガス、そしてカリフォルニア州内のリバーサイド・サンバーナーディーノ郡といった地域です。彼らが語るのは「カリフォルニアにいては未来が見えない」という率直な声です。

ギャビン・ニューサム知事は2028年の大統領選に向けて動き出していますが、全米ワーストの人口流出という現実は、左派的大都市政策の限界を白日の下にさらしています。トランプ大統領が推進する規制緩和・減税・エネルギー産業振興といった政策が多くの州で人口と経済を呼び込んでいるのとは対照的に、カリフォルニアは今もなお「脱出する人が入ってくる人を上回り続ける州」であり続けています。
「黄金州」と称えられたカリフォルニアの夢は、左派政治の長期支配の下で急速に色褪せつつあります。この現実を直視し、政策の抜本的な転換を図らなければ、ロサンゼルスの「人口流出」はさらなる加速を続けるでしょう。






