

北部の脅威:カナダに潜伏する700名のイスラム革命防衛隊員
カナダ国内に、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)に関係する約700名のエージェントが潜伏しているという衝撃的な実態が、カナダ連邦議会で明るみになりました。保守派議員が追放を求めて声を上げる中、トランプ政権が警戒する「北の脅威」が現実のものとなりつつあります。
2026年3月9日、カナダの保守党議員シュブ・マジュムダル氏は、連邦議会においてきわめて深刻な警告を発しました。「カナダ国内には、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)に関係するエージェントが推定700名にのぼる」と述べ、カナダ政府に対してこれらの人物を即刻追放するよう強く求めたのです。

マジュムダル氏の発言は、単なる個人的な見解にとどまりません。カナダ下院の司法・人権常任委員会もすでに、イラン政権と関係するとみられる数百名の人物がカナダ国内に存在する可能性を指摘した報告書を発表しています 。さらに同議員は、「イランの反体制派がカナダ国内で行方不明になっており、テヘランとの関係が疑われる殺人事件として警察が捜査を行っている」とも述べており、事態の深刻さが浮き彫りになっています。
マジュムダル氏はこの発言をX(旧Twitter)にも投稿し、広く注目を集めました。カナダ政府の対応の遅さに対する批判の声が、与野党を超えて高まりつつあります。
イスラム革命防衛隊(IRGC)は、イラン・イスラム共和国の最高指導者に直属する精鋭軍事・情報機関です。その活動はイラン国内にとどまらず、ヒズボラやハマスなどの武装組織への資金援助、中東全域におけるテロ活動の支援、さらには海外における反体制派への弾圧にまで及んでいます。

カナダは2024年6月、IRGCを「刑法上のテロ組織」として正式に指定しました 。それ以前の2022年11月には、イランを「テロ行為および組織的・深刻な人権侵害に関与した政権」として認定し、元・現IRGCの幹部を含む多数のイラン政府高官をカナダへの入国禁止としていました。こうした法整備が整いながら、なぜ700名もの関係者が今なおカナダ国内にとどまっているのか?これが問題の核心です。
IRGCはまた、イラン政権の対外情報工作においても中心的な役割を担っており、海外在住のイラン系ディアスポラを監視・威圧することで知られています。カナダ在住のイラン系コミュニティからも、IRGCによる脅迫や嫌がらせの被告が相次いで報告されています。
カナダ国境サービス局(CBSA)のデータは、政府の無作為を如実に物語っています。カナダ政府が特定したIRGC関係者28名のうち、2026年2月5日時点で実際に国外追放されたのはわずか1名にすぎません。追放命令を受けた者は3名にとどまっており、この数字は2025年6月以降まったく更新されていません。

つまり、テロ組織に指定されてから2年近くが経過しているにもかかわらず、カナダ政府はほとんど何も行動していないのです。カナダのユダヤ人組織CIJA(カナダ・イスラエル・ユダヤ人協会)のCEOであるノア・シャック氏はこう訴えています。「この政権は数十年にわたってイスラエル人を恐怖に陥れ、イラン市民を抑圧し、カナダ国内においてさえイラン系カナダ人を脅迫してきた。カナダ領内で元法務大臣の暗殺まで計画した政権のエージェントを、いまだ野放しにしている状況は容認できない。」
シャック氏はさらに、「イラン政権がくずれゆく今、カナダが逃亡先の避難場所になることを危惧している」と警告しており、イラン国内の政情不安がカナダへのIRGC関係者流入を加速させる恐れがあると指摘しています。
この問題がとりわけ重大な意味を持つのは、カナダと米国が世界最長の国境(約8,890km)を共有しているからです。この国境の多くは人里離れた地域に位置しており、監視が行き届いていない区間が数多く存在します。

IRGCのエージェントがカナダ国内に潜伏し、そこから米国への非正規越境を試みるリスクは、現実のセキュリティ上の脅威として米側の安全保障専門家も認識しています。トランプ大統領が就任して以来、北部国境からの不法越境件数は「バイデン政権時代と比較して激減した」とナショナル・パルスは報じており、トランプ政権の厳格な国境管理政策の成果が表れています。
しかし問題は、すでにカナダ国内に合法的に居住しているIRGC関係者の存在です。テロ組織の指定を受けた人物がカナダに定住し、長期にわたって活動を続けることを許すカナダ政府の対応の甘さは、米国にとっても見過ごすことのできないリスクとなっています。
事態はさらに複雑な様相を呈しています。2026年2月28日、トランプ政権は「オペレーション・エピック・フューリー」を発動し、米・イスラエル両軍によるイランへの大規模空爆を開始しました 。この軍事作戦はトランプ大統領自身が「予定より大幅に早く進捗している」と述べており、「イランはもはや海軍も航空機もなく、通信手段も持っていない」と3月9日に語っています。

この軍事作戦の進展と、カナダ国内のIRGCエージェント問題は密接にリンクしています。イラン政権が追い詰められた状況において、海外の「スリーパーセル(潜伏工作員)」が活動を活発化させる可能性が高まっているからです。カナダの安全保障専門家ステファニー・カービン氏は「イランの指導部が報復を呼びかけた場合、独自に過激行動に走る人物が増加するリスクがある」と警告しています。
カナダのCBSAには、イラン政権の崩壊により逃亡を試みるIRGC上層部がカナダへの流入を図ることへの懸念も強まっており、「政権が弱体化するほどカナダに逃げ込もうとする上級幹部が増える」という指摘が出ています。
カナダ在住のイラン系ディアスポラは、長年にわたってIRGCによる監視と脅迫にさらされてきました。バンクーバーの人権弁護士モジデ・シャフリヤリ氏は、「他のテロ組織と同様、IRGCのメンバーはごく普通の市民として地域に溶け込み、幹部からの指令があれば行動を起こす」と説明しています。

シャフリヤリ氏が共同設立した「StopIRGC」という草の根組織は、2022年以来、IRGCに関連が疑われる90名以上の人物の名前を国家安全保障機関に提出してきました 。しかしカナダ政府の対応は依然として鈍く、現場の警戒感とのギャップは埋まっていません。
カナダ国内では、イランの反体制派活動家が行方不明になり、テヘランとの関係が疑われる殺人事件として捜査が進められている事例もあります 。IRGCは2024年には、カナダ領内でアービン・コトラー元司法相の暗殺を計画したとされており 、国際テロ組織としての活動がカナダの主権を侵害している実態は明白です。
CIJAのノア・シャック氏は、カナダ国民に対して各選挙区の国会議員に働きかけるよう呼びかけており、「イランのエージェントがカナダに入国できないようにし、すでに国内にいる者は速やかに逮捕・法的措置を取るべきだ」と強調しています。

カナダの下院では、IRGCの指定テロ組織化と約700名のイランエージェント追放を求める報告書が全会一致で採択されており 、議会レベルでの意志は示されています。しかし、実際の行政執行が伴わなければ、法律は単なる文書にすぎません。カナダ自由党政権の対応の遅さが、安全保障上の深刻な空白を生み出しているのです。
カナダ国内に推定700名ものイスラム革命防衛隊(IRGC)関係者が潜伏しているという事実は、カナダのみならず、長大な国境を接する米国にとっても看過できない安全保障上の脅威です。カナダは2024年にIRGCをテロ組織として正式指定しながら、2026年2月時点で国外追放できたのはわずか1名にとどまっています。

トランプ政権が「オペレーション・エピック・フューリー」でイラン軍の解体を進める中、追い詰められたIRGCのスリーパーセルが海外で活動を活発化させる懸念はむしろ高まっています 。カナダ保守党のマジュムダル議員が議会で警告を発し、CIJAなどの市民団体が声を上げていることは評価すべきことですが、カナダ自由党政権が実効性ある措置を取らない限り、北部国境は引き続き「テロリストの通り道」となりうる脆弱性を抱え続けることになります。
「北の脅威」は現実のものです。トランプ政権が構築しつつある対テロ・対イランの国際的な安全保障の枠組みにおいて、カナダが真剣な同盟国としての責任を果たすことが、今まさに問われています。






