
トランプ大統領は2026年3月7日、フロリダ州で中南米・カリブの友好国首脳を迎え、「カルテルを根絶するための新たな軍事同盟」を発表しました。その名は「米州対カルテル連合(Americas Counter Cartel Coalition)」で、17カ国が参加する枠組みだとされています。国境危機とフェンタニル禍に直結する“麻薬戦争”に、トランプ政権が国家の総力で踏み込む構えです。

会合はマイアミ近郊のトランプ・ナショナル・ドラルで開催され、「シールド・オブ・ザ・アメリカズ(Shield of the Americas)サミット」と名付けられました。ホワイトハウスの説明では、この会合は西半球の「志を同じくする同盟国」を集める初の地域会合として位置づけられています。アルゼンチン、ボリビア、チリ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ホンジュラス、パナマ、パラグアイ、トリニダード・トバゴなどの首脳が出席したとされています。
トランプ大統領は冒頭、「本日、我々は地域を苦しめる犯罪カルテルを根絶するための、全く新しい軍事同盟を発表する」と述べ、共同対処を宣言しました。「素晴らしいことを一緒にやる」とも語り、移民、麻薬、治安を“同じ戦場”として捉える姿勢を明確にしました。
今回の中核が、米州対カルテル連合(Americas Counter Cartel Coalition)の創設です。大統領は宣言文(プロクレメーション)に署名し、米国が同盟国軍の訓練・動員を支援し、カルテル解体を加速させる方針を打ち出しました。ホワイトハウスの文書でも、同連合は「17カ国の軍幹部・代表による誓約」であり、「必要な資源と、法的に利用可能な権限を用いて」脅威を打ち負かすと明記されています。

特徴は、従来の「警察中心」ではなく、軍事力を前面に出す点です。報道では、トランプ大統領が「致死的な軍事力(致命的な軍事力)」という言葉を使い、カルテルと麻薬テロを同列の脅威として扱う姿勢を示したとされています。また、軍事資源として「ミサイルの使用」にも言及し得る、と伝えられました。
トランプ大統領がサミット閉幕後に署名した「カルテル犯罪対処宣言(Countering Cartel Criminal Activity Proclamation)」には、具体的な軍事行動の骨格となる4本の柱が明記されています。

第1の柱:テロ組織指定による法的武装
トランプ大統領は就任初日の2025年1月20日に、シナロア・カルテル、ハリスコ新世代(CJNG)など8つの麻薬カルテルを「外国テロ組織(FTO)」に正式指定しました。これにより、対テロ法規に基づく軍事力行使・資産凍結・国際的訴追が法的に可能となりました。「カルテルはアルカイダやISISと同じように扱われるべきだ」とホワイトハウス安全保障補佐官のスティーブン・ミラー氏は断言しており、この法的枠組みが全ての軍事行動の根拠となっています。
第2の柱:領土・資金源の完全遮断
宣言文では「カルテルによるあらゆる領土支配を奪い、暴力活動に必要な資金と資源へのアクセスを同盟国と協調して断ち切る」と明記しました。具体的には、カルテルが支配する農村地帯・密林・港湾の奪還、そして暗号資産を含む資金洗浄ルートの遮断が想定されています。サミット前日、米軍はエクアドル政府の要請を受けて「麻薬テロ組織」の補給網を標的にした**致死的な直接攻撃(LETHAL KINETIC ACTION)**を実施しており、これがその先駆けとなります。
第3の柱:同盟国軍の訓練・動員
宣言文には「カルテルと、暴力を輸出し組織的な脅迫で影響力を求める能力を解体するために必要な、最も効果的な戦闘力を構築するため、同盟国軍を訓練・動員する」とあります。米軍南方司令部(SOUTHCOM)が訓練の中核機関となり、各国軍への戦術指導・情報共有・装備提供を担います。ヘグセス長官は「共に戦うことが目標だが、必要なら米国は単独で戦う覚悟もある」と明言しており、同盟国の実行力を高めながら米軍が主導する構造です。
第4の柱:域外勢力の排除
宣言文は中国を名指しこそしていませんが、「西半球外からの悪意ある外国の影響力が域内に浸透することを防ぐ」と明記しており、中国・ロシア・イランによるカルテルへの支援・資金提供の遮断を意図しています。中国の化学企業がフェンタニル原料を供給し、ロシアの犯罪組織が資金洗浄を担う構図は、カルテル問題が大国間競争と直結していることを示しており、この視点こそがトランプ政権の「対カルテル戦」を単純な麻薬戦争と区別するものです。
計画は紙の上だけではありません。すでに複数の作戦が動いています。

「オペレーション・サザン・スピア」による海上封鎖では、カリブ海・太平洋から米国への海上麻薬密輸を徹底的に叩き、麻薬の海上搬入量を96%削減することに成功しました。トランプ大統領は「ボートで来る人はもうほとんどいない。残りの4%を探しているところだ」と誇らしげに語りました。
**「合同省庁間対カルテル任務部隊(JITF-CC)」**は、国防省・CIA・DEAなど複数機関を束ねた新設の諜報・標的分析チームです。この部隊がメキシコの悪名高い麻薬王「エル・メンチョ」のターゲット・ドシエ(標的情報パッケージ)をメキシコ政府に提供し、同国軍による殺害作戦を間接支援しました。米側は直接関与こそ否定していますが、実質的な「頭脳」として機能したことを示す情報が、複数の保守系メディアによって報じられています。
エクアドルでの直接打撃は、米軍と南米諸国軍との共同作戦の先例となりました。サミット直前の2026年3月6日、米軍はエクアドル政府の要請を受けて麻薬テロ組織の拠点を航空・地上から攻撃し、「致死的な運動学的行動(Lethal kinetic action)」として公式に発表しました。これはイラン相手のエピック・フューリー作戦と並行して実施された点でも注目されており、トランプ政権が「複数の戦場を同時に扱う意志と能力を持つ」ことの証明となっています。

トランプ政権の考え方は明快です。麻薬と人身取引、暴力と腐敗のネットワークを国境線で待ち受けるのではなく、供給網と司令塔を“現地”で断つという発想です。NYポストも、トランプ大統領が「彼らがどこにいるか教えてくれればいい」と述べ、同盟国と情報を共有して作戦を加速させる意図を示したと報じています。

このアプローチは、国内問題に見えるフェンタニル禍を「国家安全保障の危機」と再定義し、軍事・諜報・外交を束ねて一気に解決へ持ち込むものです。トランプ政権が掲げる「力による平和」の、米州版の実装とも言えるでしょう。
今回のサミットは、対カルテルだけではなく、米州をめぐる大国間競争の文脈でも語られています。トランプ政権は2025年11月の国家安全保障戦略で西半球を最優先とし、域外勢力の浸透を「戦略的な誤り」と位置づけました。その方針は、19世紀のモンロー主義になぞらえて「ドンロー・ドクトリン」とも呼ばれ、政権自身もこの呼称を採用しています。

パナマ運河 = 「パナMAGA運河」 グリーンランド = 「我々の土地」 メキシコ湾 = 「アメリカ湾」 カナダ = 「第51州」
トランプ大統領は演説で、パナマ運河も含むこの半球に「敵対的な外国の影響力の足場を許さない」と述べました。中国への直接言及は避けつつも、過去20年で中国が中南米・カリブの主要プレイヤーとなり、2024年の貿易が5000億ドルを超えたこと、20カ国以上が一帯一路に参加し港湾などのインフラ権益を押さえたことが、背景として示されています。
今回のサミットで特に注目されたのが、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領とエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領の存在感です。両者はトランプ大統領の最も熱心な支持者であり、それぞれの国でトランプ流の「強い指導者」政治を実践してきた盟友として、今回の会合の象徴的な柱となりました。

ミレイ大統領の役割は「南米の最大の旗手」です。アルゼンチン政府は今回の参加について「米州における外国の干渉を抑え、組織犯罪と麻薬取引を取り締まり、不法移民問題に対処する戦略を推進する場だ」と位置づけました。ミレイ大統領は大規模な財政改革と国家縮小を断行し、「南米のトランプ」「チェーンソーをもった経済改革者」として世界に名をとどろかせた人物です。今回の訪問後、ニューヨークでのJPモルガンCEOとの会談や「アルゼンチン・ウィーク2026」ロードショー開幕など、経済外交も精力的にこなす予定で、米国との関係強化を最優先に据えています。

ブケレ大統領の役割は「カルテル殲滅の”生きた証明”」です。ブケレ氏はエルサルバドルで、かつて世界最凶の殺人率を誇ったMS-13などのギャングを、強力な軍・警察の一体運用と大規模な収監によってほぼ壊滅させた実績を持ちます。トランプ大統領自身が過去に「ブケレのやり方を見ろ。彼が正しかった」と称賛しており、今回の「力による根絶」路線はまさにブケレ・モデルの域内展開とも言えます。ブケレ氏の参加は、「カルテル撲滅は絵空事ではなく、現実に成功した政策だ」という強力なメッセージを連合全体に発信するものです。
両者に共通するのは、イデオロギーを超えた「結果主義」です。左派政権が主導してきた従来の反米・多極主義とは一線を画し、「米国と組んで実際に問題を解決する」という実用主義が、今回のサミットの空気を支配していました。ミレイ・ブケレという”南米保守の星”の存在が、連合に政治的な正統性と実効性の両方をもたらしていると言えるでしょう。
この枠組みの運営では、マルコ・ルビオ国務長官の存在感が際立ちます。さらにトランプ大統領は、クリスティ・ノーム前国土安全保障長官を「シールド・オブ・ジ・アメリカズ」の特使に指名したとされています。
役割分担としては、特使は現場調整の前面に立ちつつ、全体は国務長官の監督下に置かれる、という報道もあります。

マルコ・ルビオ国務長官と国土安全保障省元長官クリスティ・ノーム(まもなく特別大使ノームとなる)が、フロリダ州ドーラルで開催された「アメリカの盾サミット」に出席し、挨拶を行いました。
国境・移民・麻薬対策を一体で進めてきたトランプ政権にとって、同盟国側の「執行力」を引き上げる人選は、政策の成否を左右する要になります。連合の実働はこれからですが、少なくとも布陣は“実行型”で固められたと言えます。

「私は最初の任期で軍を再建した。今、それを活用している。残念ながら、そうせざるを得ない。イランでは我々は非常にうまくやっている。結果を見よ。彼らは悪党だ。47年間にわたって彼らが犯してきた数々の殺戮を見よ。これはやむを得なかった。
この歴史的な日に、我々は地域を蝕む犯罪カルテルを根絶するための新たな軍事連合を発表する。この軍事連携を『アメリカ大陸対カルテル連合』と命名する。
中東でISIS撲滅連合を結成したように、今こそ国内のカルテル撲滅に向け同様の行動を取る時だ」
—トランプ大統領
トランプ大統領が今回のサミットで打ち出した米州対カルテル連合は、「言葉だけの宣言」ではありません。テロ組織指定による法的根拠の整備、資金源・領土の遮断、同盟国軍の訓練・動員、そして域外勢力の排除という4本柱が明確に示されており、すでにエクアドルでの直接打撃や「オペレーション・サザン・スピア」による海上麻薬密輸の96%削減という具体的な成果が出ています。

ミレイ大統領とブケレ大統領という「南米保守の星」が最前列に並んだことも、この連合が単なる外交的お世辞の場ではないことを証明しています。ブケレ氏がエルサルバドルで示した「カルテル壊滅は現実に可能だ」という生きた証明と、ミレイ氏が体現する「強い指導者による決断の政治」が、今回の枠組みに圧倒的な説得力を与えています。
カルテルは麻薬犯罪組織であるだけでなく、国家機能を腐食させ、移民ルートを支配し、中国・ロシアの影響力と結びつく21世紀型の安全保障上の脅威です。その現実に、軍事・諜報・外交を束ねて正面から立ち向かったトランプ大統領の決断は、オバマ・バイデン両政権が20年以上先送りし続けてきた問題に、初めて本気の「答え」を突きつけたものと言えるでしょう。

「力による平和」を掲げるトランプ政権は、イランへのエピック・フューリー作戦、ベネズエラのマドゥロ逮捕、そして今回の米州カルテル連合と、世界の複数の戦場を同時に動かしながら、アメリカの国益と市民の安全を最優先に据える姿勢を貫いています。17カ国が手を携えて「根絶」を誓ったその言葉が、これから現実の作戦として結実していくことを、心から願っています。






